お気に入りの腕時計を長年愛用していると、予期せぬトラブルに直面することがあります。特にステンレスベルトの破損は、「メーカーへ持ち込んだらベルト全交換と言われて高額見積もりになってしまった」「他店で修理不能と断られてしまった」というご相談が非常に多い分野です。
今回は、長年ご愛用の「オメガ(OMEGA)シーマスター」の金属ベルトコマが壊れてしまったというお客様からの修理ご依頼。エファーナの宝飾加工技術を駆使し、元の美しさと強度を取り戻した修復事例です。
トラブルの発生:抜け落ちてしまった「閉め殺し」パーツ

「6時側のベルトコマが突然バラけてしまって…」と、お困りの様子で店頭へお持ち込みいただきました。
詳しく状態をチェックしてみましょう。

赤丸の箇所をご覧ください。 通常のベルト調整で抜き差しするネジやピンの場所であれば、パーツの補充やピンの交換で容易に直せます。しかし今回壊れていたのは、製造段階で強く圧入され、ユーザー側では分解できない構造——いわゆる「閉め殺しのパーツ」と呼ばれる箇所のサイドコマが抜け落ち、どこかへ紛失してしまっていました。
通常、メーカーサービスではこの構造部分の単品修理を行っておらず、「ブレスレット一式の交換(数万円〜の費用)」と提案されるケースがほとんどです。ですが、エファーナでは「諦める前に、知恵と技術で直せる方法はないか」をまず考えます。
職人の判断:余りコマを「ドナー」として再利用する

今回、お客様は時計をご購入された際にサイズ調整で外した「余りコマ」を一緒にお持ちくださっていました。
「この余りコマの端にあるパーツを移植できれば、純正と同じ質感のまま修理できるはず」
余りコマを解体することにしました。しかし、この余りコマ自体も「閉め殺し構造」でガッチリと結合されています。強引に引っ張ればステンレスが歪んで使えなくなってしまうため、専用の工具を用い、パーツへ負担をかけないようミリ単位の力加減で丁寧に分解していきます。

無事にパーツを分離できました。バラバラにしたパーツの中から、今回の破損箇所と全く同じ形状・厚みを持つサイドパーツを選び出します。
精密なドリル加工と仮組み

選んだパーツをそのまま組み込もうとしても、元の圧入ピンと径が合わなかったり、長い連結ピンが通らなかったりします。まずは時計本体のベルトへあてがい、すき間や動きの滑らかさに問題がないか仮組みして動作を確認します。

可動を確認。 新しい連結ピンをスムーズかつ強固に貫通させるため、ピンバイス(手回し精密ドリル)を使い、パーツの側面に極細の貫通穴を掘り進めていきます。
金属を削る手応えを感じながら、角度が1度でもズレないよう慎重に刃を進めます。

ピンの径ギリギリのサイズまで精密な穴あけ加工が完了しました。穴が大きすぎればベルトにグラつき(ガタ)が生まれ、小さすぎればピンが通りません。「ぴったり通ってグラつかない」絶妙な寸法調整です。
パズルのような組み立てと完成

加工したパーツ、中央のコマ、そして長めの貫通ピンを、まるで知恵の輪やパズルを組み立てるように順番に噛み合わせていきます。

最後は、反対側のサイドパーツを絶妙な力加減で叩き込み、ピンをしっかりと圧着・固定します。引っ張っても叩いても絶対に抜けない強度がしっかり出ていることを確認して、接合作業の完了です。

眠っていた純正の「余りコマ」をドナーとして活用したため、色味や傷の風合いも周囲のコマと見事に馴染み、どこを修理したのか分からないほど違和感なく元の美しいラインに修正できました。
これからも、末永くご愛用いただくために
大切な想い出が詰まった腕時計。ベルトが途切れて腕から落ちてしまうと、最悪の場合はガラスの破損や内部ムーブメントの故障にも繋がりかねません。
今回の修理では、構造を根本から見直し、加工によって強固に連結を復元いたしましたので、これからも落下の心配なく安心してお使いいただけます。
「古い時計だからパーツがない」「他店で修理を断られてしまった」とお困りの時計がございましたら、あきらめずにぜひ一度エファーナへご相談ください。職人の技術と提案力で、大切な時計が再び時を刻み、お客様の腕元で輝くお手伝いをさせていただきます。
当店エファーナのWebサイトでは、今回のブレスレット修理をはじめ、電池交換、オーバーホール、ジュエリーのリフォーム事例なども多数ご紹介しております。ぜひ参考にご覧くださいませ。