遠方にお住まいの方や、お近くに信頼できる時計修理店がないというお客様から、当店では郵送による時計修理のご相談を数多くいただいております。
今回ご紹介するのは、以前にも当店へ時計の修理をご依頼くださった、神奈川県にお住まいのリピーター様からのご相談です。
想い出の詰まったエルメス「ロケ」の到着

梱包を解くと姿を現したのは、エルメス(HERMES)を代表するバングルタイプのレディースウォッチ「ロケ(LO1.201)」です。ゴールドのフレームに高級感あふれるレザーがあしらわれた、まるでジュエリーのような美しさを持つアイコンモデルです。

「長年使わずに大切に仕舞い込んでいたのですが、修理して再び動くようになるならまた身につけたい」という想いを込めて、遠方より当店を信頼してお送りくださいました。
大切な時計を預けてくださるお客様のご期待に応えるべく、身が引き締まる思いです。まずは荷物が無事に届いたことをお客様へすぐにご連絡差し上げ、安心していただいた上で診断作業へと入ります。
構造の解体と内部診断:職人の判断基準

まずは時計全体の状態チェックからスタートします。エルメスの「ロケ」は、一般的な腕時計とは異なり、金属製のバングルフレームの中に時計本体(ケース)が埋め込まれている特殊構造をしています。

内部の診断やメンテナンスを確実に行うため、まずはバングルと時計本体を繋ぎ止めている超極小の側ネジを取り外していきます。パーツに傷をつけないよう、専用の精密ドライバーで慎重にねじを抜き、フレームからケース本体を取り外します。

分離したケース本体の隙間に、時計用のこじ開け工具を刃先1ミリの狂いもなく差し込み、裏蓋を開けていきます。

裏蓋を開けると、HERMESの刻印が入った小さなクォーツムーブメント(電子駆動部)。「観察と診断」の工程です。
長期間止まったまま保管されていたクォーツ時計は、電池からの液漏れや、内部の潤滑油が完全に乾ききって固着しているケースが多々あります。また、クォーツ時計の心臓部である電子回路(コイルや基板)自体が経年劣化によって寿命を迎えていることも少なくありません。
ここで職人は「古いムーブメントをオーバーホール(分解清掃)して使うか」「新しい同型ムーブメントへ載せ替えるか」を天秤にかけます。
- オーバーホールのメリット・デメリット: 元のパーツを活かせる反面、電子回路が劣化している場合は清掃・油の差し替えを行っても数ヶ月で再び止まってしまうリスクがあり、分解工賃がかかるため費用も高くなりがちです。
- ムーブメント新品交換のメリット・デメリット: 内部の機械をそっくり新品の同型品へ入れ替えるため、新品同様の精度と高い耐久性が一気に手に入ります。多少ご予算は上がりますが大きなメリットがあります。(新品のムーブメントが有れば…)
今回の診断の結果をお客様へご報告。メリット・デメリットをお伝えし、新品ムーブメント交換での対応を選択されました。これからの数年・数十年をストレスなく安心して使っていただくための最適解として「新品同型ムーブメントへの交換作業」です。お客様にご納得いただいた上で作業進行です。
新品ムーブメントの載せ替えと動作テスト

準備したのは、オリジナルと全く同じ規格・構造を持つ新品の同型ムーブメントです。慎重に針と文字盤を移植し、新しいムーブメントをケースへとセットします。
セット後は専用の測定器(パルスチェッカー)に乗せ、電子回路から正確なステップ信号が出ているか、ズレなく時を刻んでいるかを厳密にテストします。

正常な稼働を確認できたら、裏蓋をしっかりと密閉。最初に分解したバングルフレームの中へ時計本体を丁寧に戻し、側ネジをしっかり締め込んで組み立て完了です。ゴールドの輝きとシックな文字盤が、再び時を刻み始めました。
長年稼働したムーブメントへの敬意を込めて

役目を終えたこれまでの旧ムーブメントは、綺麗にパック詰めしてお客様へ「記念」としてお返しいたします。
こんなに小さな、指先ほどの機械が、365日四六時中休みなく動き続け、正確な時間をオーナー様に知らせ続けてくれていたと思うと、なんとも愛おしく感謝の気持ちが湧いてきます(笑)。
これからも、末永く愛される時計とともに
仕上がったエルメス「ロケ」は、内部が新品の機械に生まれ変わったため、これからも安心してお出かけや日常のパートナーとしてご愛用いただけます。
「昔買って長年眠っているブランド時計がある」「メーカー修理だと高額で諦めていた」というお品物がございましたら、ぜひ一度エファーナへご相談ください。
当店エファーナのWebサイトには、遠方からの修理事例や時計の電池交換、オーバーホール、ジュエリーリフォームなどの事例を多数紹介しております。ぜひお持ちのアイテムのメンテナンスの参考になさってくださいね。