ライフスタイルや旅行の楽しみ方が多用化する中で、腕元で異なる2つの地域の時刻を同時に確認できる「デュアルタイム(Dual Time)」仕様の腕時計は、旅好きの方や海外とやり取りの多い方に長年愛され続けている特別なアイテムです。
今回は、エレガントなゴールドケースに2つの文字盤を備えたレディース腕時計のダブル電池交換とメンテナンスの様子をご紹介いたします。
旅のパートナー:二つの時を一度に示す特別なデザイン

今回お持ち込みいただきましたのは、縦長のスマートなケース上下に、それぞれ独立した時計が配置されたデュアルタイム仕様のレディースウォッチです。
上側の文字盤で「日本の現在時刻」、下側の文字盤で「旅行先の現地時刻」を設定しておけば、時差計算をすることなく一目で両方の時間を確認できるため、海外渡航や二拠点生活を楽しまれるお客様に大変人気の高いデザインです。

「最近出番が減っていた間に、二つとも針が止まってしまって…」とのことで、再び活躍してもらうために電池交換のご依頼でお預かりいたしました。
観察と診断:2つの心臓を巡る通電清掃
一般的な腕時計にはムーブメント(駆動装置)が1つ入っていますが、このデュアルタイム構造の時計には、内部に全く独立した2つの超小型クォーツムーブメントが並んで配置されています。つまり、電池も2個必要となり、メンテナンスも2台分のアプローチが求められます。

構造を確認しながら丁寧に裏蓋を開け、まずは内部の観察からスタートします。
役目を終えた2個のボタン電池を取り出してみると、長年動かしていなかった影響もあり、電池と触れ合う端子部分にわずかな曇りや酸化膜が見られました。このまま新しい電池を入れても、接触不良を起こしてすぐに止まってしまう可能性があります。
そこで微細な綿棒と専用の洗浄液を用いて、接触端子の表面を通電よくしておきます。金属本来の輝きを取り戻すことで通電効率を格段に高め、新しい電池をそれぞれに挿入します。
目視による針の動作確認に加え、専用の測定器(パルスチェッカー)へ乗せ、2つの機械双方から規則正しい電子信号(パルス)が出力されていることを確実にテストいたします。
永く守るための判断:角型パッキンのグリースメンテナンス
内部の機械が元気に動き始めたら、続いてケースの「気密性」を守るパッキンチェックへと移行します。

裏蓋からパッキンを取り外し、状態を確認します。丸型の時計と異なり、本機のような長方形のケースには特殊な「角型シリコンパッキン」が使用されています。角型は折れ曲がりや引っ張りに弱いため、硬化や歪みがないかを拡大鏡と工具で慎重に診断します。

パッキンが接する裏蓋の内側の溝や縁周りは、汗や皮脂、微細な埃が溜まりやすいポイントです。ここにゴミが挟まったまま蓋を締めると、隙間から湿気が進入する原因となります。綿棒を使って、微細な汚れを残さずキレイに掃き出して清掃します。

仕上げに、パッキン全体へ専用のシリコングリース処理を施します。グリースを含ませたスポンジで優しく包み込むように塗布することで、シリコンの柔軟性が復元され、裏蓋を閉めた際の密着度と防塵・防水性能が大幅に高まります。
再び、二つの時を美しく刻む姿へ

シリコングリース処理を終えたパッキンをズレなく装着し、裏蓋を均一な圧力でしっかりと密閉します。
最後にリューズを操作し、上下それぞれの時計の時刻をピッタリと合わせます。作業時に付着した指紋をクロスで美しく拭き上げ、お客様へお渡しする準備が整いました。
大切な時計のメンテナンスはエファーナへ
1つのケースに2つの機械が詰まったデュアルタイムウォッチは、繊細なお手入れを行うことで、これからも安心してお出かけや旅のパートナーとしてご愛用いただけます。
エファーナのwebサイトにも様々な事例を掲載しているので、ご参考になられてください。
止まってしまった思い出の時計や、少し変わった構造の腕時計のメンテナンスでお困りの際は、ぜひお気軽にエファーナへご相談くださいね。職人が一つひとつの時計と誠実に向き合い、最適なメンテナンスをご提案させていただきます。