CITIZEN / シチズン|文字盤6時位置インデックス(パーツ)外れ!精密固定の修理

文字盤の6時位置から剥がれ落ちて転がっているインデックスパーツ(赤丸で強調)
6時位置のインデックスが完全に外れ、文字盤内を転がっている状態

文字盤の中でパーツがゴロゴロ……ウェブ検索からのご相談

毎日を共に過ごす腕時計。ふと文字盤に目をやったとき、あるはずのパーツがぽろりと外れて文字盤の中で転がっていたら、不安になってしまうものです。

そんな「文字盤内のインデックス(目盛り)外れ」の自動巻き腕時計修理のご相談をいただきました。修理対応ができるお店をウェブサイト検索で熱心に探され、当店「エファーナ」を見つけてくださったとのことです。

黒文字盤に革ベルトを合わせたシチズン自動巻き腕時計の全体外観
今回修理をご依頼いただいたシックなシチズンの自動巻きモデル

二次災害を防ぐために:現状の確認と迅速なケース開放

文字盤の6時位置から剥がれ落ちて転がっているインデックスパーツ(赤丸で強調)
6時位置のインデックスが完全に外れ、文字盤内を転がっている状態

まずは現状をじっくりと観察します。お話の通り、文字盤の6時位置に配置されていたシルバーのインデックスパーツが完全に脱落し、ガラスと文字盤の狭い隙間でカラカラと動いてしまっています。

文字盤内でパーツが転が時針・分針・秒針に引っ掛かってしまうとムーブメントの損傷につながることがあります。針にパーツが巻き込まれると、針が曲がって文字盤を傷つけたり、最悪の場合は機械の心臓部に過度な負荷がかかり、ムーブメント自体が破損してしまう二次災害を引き起こします。お客様が「針に引っ掛からないかとても心配」と仰るのも当然の事態です。そのため、一刻も早くパーツを安全な場所へ救出する必要があります。

シチズン腕時計の裏蓋を開放し内部の自動巻きムーブメントを露出させた状態
構造を確認しながら裏蓋を開放し、内部の状態を観察

時計を裏返し、ケース裏蓋の構造を確認した上で、慎重に開放作業を行います。裏蓋を開けたら、内部のローターや輪列の動きに異常がないかしばし観察。

精密なパーツ救出と、接着面のコンディション確認

ケースから取り出されたムーブメントと、ケースの内側ガラス面に張り付いている外れたパーツ
機械をケースから取り出すと、内ガラス面に外れたパーツが残されていました

ケース内部の構造を把握したら、リューズを抜いてムーブメントと文字盤を一体のまま、慎重にケースから取り出します。取り出した機械は、チリの付着や予期せぬ接触を防ぐため、時計専用の白い固定台(プラットフォーム)へ載せてしっかりと保護。

次に、ケース内を確認すると、外れた6時位置のパーツは内側のガラス面にピタリと張り付くように残されていました。これをピンセットで傷をつけないよう優しく救出します。

固定台に載せられた文字盤の、インデックスが剥がれて剥き出しになった6時位置(赤矢印)
パーツが脱落してしまった文字盤の6時位置(赤矢印部分)

改めて、固定台の上の文字盤をチェックします。赤矢印で示した6時位置の本来パーツがあった場所には、インデックスを文字盤地板に固定するための小さな2つの「足穴」がぽっかりと空いているのが見えます。

文字盤地板の塗装が一部剥がれている6時位置の拡大写真
地板の塗装剥がれが見られますが、パーツを戻せば隠れる範囲です

さらに顕微鏡で接着面を拡大してみると、パーツが外れた際の衝撃か、あるいは過去の経年劣化によるものか、文字盤地板の黒い塗装がわずかに剥がれて白っぽくなっているのが確認できました。しかし、幸いにもこの剥がれは、救出したインデックスパーツを元の位置に正確に戻せば、その下にすっぽりと隠れてしまう範囲。仕上がりの美しさには影響がないと判断し、安心してお直しを進めます。

内部外装清掃

文字盤へのパーツ再固定は、非常に神経を使う作業です。一般的な接着剤を通常に使ってしまうと、文字盤の表面にはみ出してシミになり、せっかくの美しい黒文字盤を台無しにしてしまいます。

赤矢印で示された文字盤の穴とパーツ裏面へ専用固定剤を用いて貼り付けを行う様子
パーツ裏側と文字盤の穴だけに、必要最小限の専用固定剤を塗布して接着

そこで当店では、時計専用に調合された特殊な固定剤を使用します。救出したインデックスパーツの裏側の突起(足)だけにほんの少し、接着強度を保てる最低限の量を塗布します。そして、文字盤面の小さな足穴の中にだけ的確に固定剤を入れ込み、元の位置へと寸分の狂いもなく垂直に貼り付けます。

綿棒を使ってケース内側のガラス面や文字盤周辺の微細なホコリを取り除く作業
組み戻し前に、綿棒を使って内部の微細なホコリを徹底的に除去

パーツの固定と同時に、内部文字盤面を完全にクリアにするためのクリーンアップを行います。パーツが文字盤内を転がっていたことで発生した目に見えないほどの擦れチリや、微細なホコリを綿棒を巧みに使って徹底的に取り除いていきます。

防水性能を守るためのパッキンメンテナンス

時計の内部が綺麗になったら、次は時計を外部の汗や水分から守る「防水パッキン」のメンテナンスへと移ります。

ピンセットで裏蓋に装着されている防水パッキンを取り外して状態をチェックする様子
裏蓋に収まっている防水用ゴムパッキンの状態をチェック
パッキンを取り外した裏蓋の溝に溜まった汚れを綿棒で掃除する様子
パッキン溝に蓄積した汚れを綿棒で一本ずつ綺麗にクリーニング

裏蓋のパッキンを取り剥がし、ゴムの弾力性や劣化状態を細かくチェックします。それと同時に、パッキンが収まっていた裏蓋の溝部分もお掃除します。この溝は汗や皮脂による汚れが最も溜まりやすい場所。ここを綿棒で徹底的に綺麗に拭き上げることで、新しいグリースの効果を最大限に高めることができます。

丸いゴムパッキンに専用の黄色いスポンジ器を用いてシリコングリースを塗布する様子
状態良好なパッキンへ、防水性を高めるシリコングリース処理を施します

パッキン自体の状態は非常に良好で、まだ十分に再利用可能であることが確認できました。確認後は、パッキンの乾燥を防ぎ防水性をしっかりと維持させるため、専用の塗布器を使ってシリコングリース処理を隅々まで満遍なく施します。

組み立てと最終確認:再び息を吹き返した大切な時計

すべてのパーツ固定、ケース清掃、パッキン処理が完了し、いよいよ時計を元の姿へと組み戻す最終段階です。

6時位置のパーツが美しく修復され、ケースに収まって正常に稼働しているシチズン腕時計
パーツが元の位置へ強固に固定され、美しさを取り戻したシチズン

6時位置のインデックスパーツがしっかりと、強固に取り付けられたことを顕微鏡下で再確認します。その後、ケースへ戻す直前にブロワーを使って文字盤やムーブメントに付着した微細なホコリを完全に吹き飛ばし、細心の注意を払いながらムーブメントをケースの中へと戻します。

グリースアップしたパッキンをセットし、裏蓋をしっかりと隙間なく閉じたら、リューズを回して現時刻に合わせます。カレンダーの切り替わりや針同士のクリアランス(隙間)、そしてパーツが今度は確実に固定されているかを厳しくチェックする最終の動作確認を行います。すべての正常動作が確認でき、これにて順調に一連の作業が完了いたしました。

おわりに:作業完了のご報告と、エファーナからのメッセージ

お引き渡しの際には、お預かりからパーツ救出、そして固定とパッキン清掃に至るまでの作業の流れを、写真と共にお客様へ詳しくご報告。

エファーナの時計修理専門サイトにも、今回のようなインデックス外れの修復をはじめ、各種時計のオーバーホールや外装研磨など、様々な事例を豊富に掲載しているので、ぜひご参考になられてください。