大切な腕もとを飾る名機「オメガ スピードマスター」。長年愛用していると、思わぬトラブルに見舞われることがあります。 今回ご相談いただいたのは、「気がつくと時計の内部に白い曇りが広がっていた」という症状でした。
ガラスの内側が曇る現象は、ケース内部に水分が侵入(入水)してしまったサインです。水分が残ったまま放置すると、繊細なムーブメントが錆びついてしまい、大掛かりなパーツ交換やオーバーホールが必要になってしまうこともあります。
「もう治らないのではないか…」と不安なお客様からお預かりし、すぐさま緊急メンテナンス作業に取りかかりました。今回はその精密な復旧作業の裏側をご紹介いたします。
01. 水分侵入によるガラスの曇りを確認

お客様とお話ししたところ、日常生活の中で少し水がかかってしまったとのこと。目に見えないわずかな隙間から湿気が入り込んでしまったようです。
02. スピードが命!早めの対処で裏蓋を開口

水分侵入への対処は一刻を争います。すぐにお預かりし、裏蓋を丁寧に開けて内部の状況を確認します。
03. 機械内部の精密観察

裏蓋を開けた後はしばし観察の時間を取ります。サビの発生や水滴の直接的な付着がないか、拡大ルーペを用いて注意深く見極めます。
04. ムーブメントの取り外しと乾燥・ケース観察

本体ケースからムーブメントを取り外し、専用の固定台へセットして保護しながら自然乾燥を進めます。その間に、空になったケース内部からガラス面の状態を確認します。
05. アルコールによるガラス内側の清掃

アルコール処理を施しながら、ガラス内側に付着した水分の跡やくすみを綺麗に拭き取っていきます。透明感がよみがえり、元の美しい表情を取り戻していきます。
06. 防水の要、パッキンの状態確認

今回の入水原因を探るためにも、パッキンのチェックは欠かせません。劣化や硬化、亀裂がないかを慎重に確認します。
07. シリコングリースの塗布処理

パッキンに専用のシリコングリースを馴染ませます。これによりゴムの柔軟性を保ち、防水性・気密性を高めることができます。
08. ケース隙間とパッキン溝の清掃

パッキンが収まっていた本体ケースの溝には、長年の埃や汚れが溜まりがちです。ここも綿棒や専用ブラシを駆使して綺麗にお掃除します。
09. プッシャーボタン周りの目詰まり解消とオイル処理

クロノグラフ特有のサイドボタン(プッシャー)周辺は汚れが固まりやすいポイントです。詰まった汚れを清掃し、オイル処理を施すことでスムーズな操作感を取り戻します。
10. 裏蓋内側のすき間掃除

続いて裏蓋の内側、ケースとの接合部分の隙間を清掃します。汚れをしっかり拭き取ることで、組み上げた際の気密性をより確実なものにします。
11. 組み立て・動作テストを経てお客様のもとへ
ムーブメントの乾燥作業が完了したら、慎重に本体ケースへ戻し、針の動きやクロノグラフ機能の動作チェックを行います。
しばしランニングテストを行い、精度の乱れや再度の曇りが発生しないことを確認して、無事にお客様へご連絡となりました。
ガラスの曇りが消え、再び美しく時を刻む愛機と対面されたお客様のホッとした笑顔がとても印象的でした。
おわりに
腕時計の内部への水分侵入は、「どれだけ早く対処できるか」が運命を分けます。「少し曇っているだけだから…」と放置せず、異変に気づいたらすぐに当店へご相談ください。
大切な思い出の詰まったお時計を、これからも長く安心してお使いいただけるよう、ひとつひとつの工程に心を込めてメンテナンスいたします。時計のトラブルやメンテナンスのご相談は、ぜひエファーナまでお気軽にお問い合わせください。