Hamilton Pulsar/ ハミルトン パルサー|動かなくなったヴィンテージLEDデジタル時計の電池交換とメンテナンス

青い指サックをつけた手で保持されたハミルトン パルサーの正面姿
作業開始前の状態確認と外観チェック。

都内にお住まいのお客様からお送りいただいた、ヴィンテージウォッチ「ハミルトン パルサー(Hamilton Pulsar)」のメンテナンスの様子をご紹介いたします。

厳重に梱包され届いた金色のハミルトン パルサー腕時計
都内のお客様から大切に送られてきたハミルトン「パルサー」。

厳重に梱包されて届いたこちらの時計。1970年代に世界初のLEDデジタル腕時計として一世を風靡した名機「パルサー」。長期間動かないまま保管されていたそうで、「もし動き、再び使えるようになるのなら…」という一縷の望みを託してご相談くださいました。

本来、こういった年代物のデジタル腕時計内部にある基板そのものは、我々職人の手元で回路修理を行うことが極めて困難な部類に入ります。そのため、当初は「デジタル基板自体の修理は出来かねます…」とダメ元でのご案内となりましたが、「できる限りの手を尽くしてみましょう!」という当店の姿勢にご納得いただき、現物をお預かりして作業を進めることとなりました。

青い指サックをつけた手で保持されたハミルトン パルサーの正面姿
作業開始前の状態確認と外観チェック。

まずは時計全体の状態を隅々までじっくりと観察・確認していきます。ケースや風防のコンディションを把握し、作業工程を組み立てます。

裏蓋のリングワッシャー部分を示すハミルトン パルサーの裏面
専用工具で裏蓋を固定するリングワッシャーを慎重に緩めます。

内部構造を確認したら、裏蓋を固定しているリングワッシャーを専用工具で慎重に緩めて開口していきます。古いモデルですので、ネジ山やパーツを傷つけないよう細心の注意を払います。

裏蓋を開けた内部に2個のボタン電池と基板が設置されている様子
裏蓋を開けると内部に古い電池が残っていました。

裏蓋を開くと安価なLR電池が内蔵…。これを本来の時計用、SRの電池2個を入れ替えていきます。
詳しくは☟

LR(アルカリボタン電池)とSR(酸化銀電池)の違いを解説した比較表。LR側には赤のバツ印、腕時計に適したSR側には赤の大きな丸印が付けられている。
腕時計には安定した電圧を保てる「SR(酸化銀電池)」の使用が必須です。

裏蓋を外してみると…おっとっと、古い電池が内部に残ったまま…。幸いにも丁寧に観察したところ、基板を傷めるような深刻な液漏れなどは確認できませんでした。まずは長年の役目を終えた古い電池を取り除きます。

綿棒を用いて内部の電池接触端子周辺を清掃する様子
接触端子の曇りを綺麗に磨き、通電性を高めます。

この年代のデジタル時計は、電気の通電状態が動作の成否を大きく左右します。電池と接する接触端子に曇りや酸化が見られたため、丁寧に磨き上げて通電性を最大限まで高めます。

精密ピン工具を使って電池ボックスの細部汚れを除去する様子
端子周辺に固着した汚れを精密工具で優しく除去。

2個内蔵されるムーブメントにとって、安定した電源供給は命です。端子周辺に固着していた長年の微細な汚れも、ピンや精密工具を用いて綺麗にお掃除していきます。

回転工具・ポイントを用いて裏蓋側の金属端子を磨く様子
裏蓋側の通電端子も丁寧に磨き上げておきます。

本体側だけでなく、裏蓋側に配置されている通電端子もしっかりと磨き上げておきます。こういった地道な下処理を行うことで、新しい電池を入れた際にも安心して長くお使いいただけるようになります。

正面の赤いLEDに「11:11」等の数字が鮮やかに点灯したハミルトン パルサー
ボタンを押すと赤いLED表示が見事に復活!一安心の瞬間です。

新しい電池をセットし、裏蓋の向きを確実にあわせた上でしっかりと閉じます。そして、緊張の瞬間…前面のボタンを押すと、真っ赤なLED表示がくっきりと浮かび上がりました!無事に息を吹き返した姿を確認でき、職人としても一安心の瞬間です。なお、パルサーの時刻合わせはマグネットを裏蓋の特定位置にあてがいながら調整する特殊な仕様となっています。

長年眠っていた思い出の時計が再び時を刻み始め、お客様のご要望にお応えすることができて本当に嬉しく思います。これでこれからも安心してお手元でご愛用いただけます。心を込めてお渡しの準備を整えておりますので、完成のご連絡まで今しばらくお待ちくださいませ。