ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)を象徴する時計コレクション「タンブール」。太鼓をモチーフにした独特のケース形状と、文字盤に散りばめられた洗練されたデザインが美しいドレスウォッチです。
高級ブランドの腕時計が止まってしまったとき、ただ電池を入れ替えるだけの簡易な作業では思わぬトラブルにつながることがあります。お客様の思い出が詰まった大切な時計だからこそ、私たちは工具の準備段階から一つひとつの工程にこだわり、これからも安心してお使いいただけるメンテナンスを行っています。

極細ネジを傷つけない「専用工具」の仕込み
まずは時計の裏蓋構造を確認することから始まります。
タンブールの裏蓋は、ブランドのモノグラム柄が整然と刻印されており、その外周を6本の非常に小さな極細ネジが固定しています。

この極細ネジは一般的なドライバーをそのまま使うと、刃先のサイズや厚みが合わず、ネジ山を潰してしまったりケースに傷をつけたりする危険性があります。
そのため、作業前に研磨材を使い、このネジ溝へミクロン単位でピッタリ嵌まり込むよう専用のドライバー刃先を仕立て上げます。

「道具を時計に合わせる」——この手間を惜しまない準備こそが、時計を傷つけずに安全な作業を行うための判断であり、第一歩です。
裏蓋の開放と「見えない汚れ」の除去作業
ピッタリとフィットする専用ドライバーを用いて、6本のネジを均一な力で慎重に取り外し、裏蓋を開口します。

役目を終えた古い電池を取り外し、ムーブメントの回路や端子部分に液漏れやサビがないかをしっかり観察します。
続いて、裏蓋の溝に張り付いているゴムパッキンの状態を確認します。

長年の締め付けにより裏蓋側に密着していたパッキンを慎重に取り外し、硬化や切れがないかをピンセットで診ていきます。
そして、細かなパーツのすき間に溜まった汚れの清掃へ移ります。

6箇所の小さなネジ穴や裏蓋の段差には、日常の使用で入った微細なチリや皮脂汚れが溜まっています。金属を傷つけない木製の爪楊枝で固着汚れを浮かせ、綿棒で丁寧に拭き取っていきます。この清掃を怠ると、裏蓋を閉めた際にゴミが挟まり、防水性が落ちる原因になります。
気密性を高める「グリース処理」と組み上げ
ケースと裏蓋の清掃を終えたら、パッキンにシリコングリース処理を施します。

専用のスポンジ塗布器でパッキン全体へ均一にグリースを塗布し、ゴムの柔軟性と防水性を復活させます。
新しい電池をセット後、清掃した裏蓋へグリースアップしたパッキンと内蓋(スペーサー)を隙間なく戻します。

内蓋が内部パーツをしっかりと保持し、ケースの密閉感と防塵性を高めてくれます。
二重の動作チェックを経て、お客様の腕元へ
製作した専用ドライバーを使い、6本の極細ネジを対角線順に均一なトルクで締め込みます。
最後に、目視による針の運針確認に加え、専用機器「パルスチェッカー」の上に乗せてテストを行います。

回路から正常な周期でパルス信号が出ていることを確認できたら、現時刻とカレンダーをぴったり合わせて作業完了です。

ケースや風防ガラスをサッと磨き上げると、静止していた針が再び心地よいリズムで時を刻み始めました。
お客様の大切な時計を「傷つけず、美しく、これからも長く動く状態」でお返しすること。工具一つからこだわり抜く手仕事で、あなたの腕時計も蘇らせてみませんか?
腕時計の止まりやお手入れのご相談は、いつでもお気軽にお申し付けください。