都内にお住まいのお客様よりご送付にてお預かりいたしました、歴史的な名作デジタルウォッチ「ハミルトン パルサー(Hamilton Pulsar)」の電池交換のご依頼事例をご紹介いたします。
1. 都内のお客様から届いた思い入れのある一品

お客様からお送りいただいたお荷物を開封すると、お品物が傷つかないよう大変丁寧に梱包されており、温かいお手紙が添えられていました。お客様がこのお時計を大切にされている想いがひしひしと伝わってまいります。
ハミルトン「パルサー」といえば、1970年代に世界初のLEDデジタルウォッチとして彗星の如く登場し、時計史にその名を刻んだ画期的なモデルです。SF的なレトロモダンのデザインは、現在でも多くのファンを魅了し続けています。
2. デジタル時計・ヴィンテージ時計の電池交換におけるリスク

アナログ時計や機械式時計であれば、歯車などの物理的なパーツの磨耗や噛み合わせを目視で確認し、分解掃除(オーバーホール)やパーツ交換を行うことで修復できるケースが多くあります。
しかし、デジタル時計の電子回路や基板は、物理的なギアとは異なり、見た目だけで不具合の箇所やICのダメージをすべて判別することが非常に困難です。特に数十年前の初期デジタル時計やヴィンテージモデルの場合、以下のようなリスクが存在します。
- パーツの供給終了: 内部回路やICチップが破損している場合、メーカーにも交換部品が存在しない。
- 漏液による基板破壊: 電池切れの状態で長期間放置されると、電池内部のアルカリ液が漏れ出し、電子回路を不可逆的に腐食させてしまう。
- 電子部品の寿命: 電池を新品に交換しても、基板自体の経年劣化により通電しない、あるいは表示が正常に点灯しない。
エファーナでは、こうしたリスクや「電池交換を行っても動かない可能性があること」をあらかじめお客様にご説明し、ご理解いただいた上で慎重に作業を進めております。
さっそく裏蓋を開けて内部の状態を確認してみると……おっとっと。
3. 内部状態の確認と通電への試み

裏蓋を開けると、内部には長年の間に漏れ出た電池の液漏れ跡(白い結晶)や、緑青(ろくしょう)、腐食による粉塵がびっしりと固着している状態でした。
「んんんんん…」と思わず言葉を呑み込むほど厳しいコンディションですが、ダメもとでも諦めずにできる限りの手を尽くします。古い電池を取り外し、固着した汚れや錆を専用のブラシや工具を使って慎重に削り落とし、接触端子(バッテリーコンタクト)の磨き作業を行います。

細部まで綿棒や洗浄液を用いて丁寧に拭き取り、新たな電池をセットして内部回路への通電を試みました。
4. 作業結果とお力になれなかった寂しさ
丁寧な清掃と導電の試みを重ね、なんとか復活を願って作業を進めましたが……大変残念ながら、今回は内部回路の重度な断線・断裂が見られ、通電・画面点灯の回復には至りませんでした。
わざわざ遠方からご期待を込めてお送りいただいたお客様のお力になれず、悔しさと寂しさでいっぱいですが、現在の内部状況をありのままにお伝えし、ご返送の対応をさせていただきました。
5. 時計の長期保管とメンテナンスについて
今回のケースのように、クォーツ時計やデジタル時計は「電池が切れた状態で長期間放置すること」が最も大きなトラブルの原因となります。
もし長期間ご使用にならないお時計がございましたら、液漏れによって大切な基板が破壊されてしまう前に、早めに電池を取り外しておくか、定期的な電池交換をおすすめいたします。
エファーナでは、動くかどうか分からない古いお時計や、他店で断られてしまったような難しいご相談に対しても、リスクや可能性を事前にお伝えした上で、可能な限り真摯に向き合っております。
当店ウェブサイトでは、他にも様々なブランド時計の電池交換や修理・オーバーホール事例、ジュエリーリフォームの事例を多数掲載しております。お手持ちの時計やジュエリーでお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談・ご参考になさってください。