Martin & MacArthur / マーチンマッカーサー|木製腕時計の繊細なウッドケースのメンテナンス手順

パルスチェッカーの上で動作確認を行い最終組み上げされた木製腕時計
パルスチェッカーで正常動作を確認後、感覚を研ぎ澄まして裏蓋を締め込み完成です。

今回は、当店のウェブサイト検索を通じてご相談をいただきました、ハワイの伝統的な高級木材「コアウッド」などを使用したアイテムで知られるブランド「マーチンマッカーサー(Martin & MacArthur)」の木製腕時計の電池交換事例をご紹介いたします。

1. 自然素材ならではの魅力と取り扱いの難しさ

グレーの作業マットの上に置かれたマーチンマッカーサーの木製腕時計
ウェブサイト検索より電池交換のご依頼をいただいたマーチンマッカーサーの木製腕時計。

温かみのある木の質感と美しい木目が印象的なマーチンマッカーサーのウッドウォッチ。止まってしまったとのことで電池交換のご相談をいただきました。

木製の腕時計は、金属製の時計とは異なり、着用される方の使用状況や保管環境(湿度・乾燥・温度変化など)の影響を大きく受けます。木材自体がわずかに伸縮したり、経年変化によって脆くなっている場合もあるため、作業には金属製時計以上の慎重さが求められます。

2つの小さな穴が開いたマーチンマッカーサー木製腕時計の裏蓋部分の拡大
木製ケースの裏蓋構造。湿気や乾燥による木材の状態を観察しながら作業を進めます。

裏蓋を確認すると、回転させて開閉する「スクリューバック式」になっています。木材に直接ネジ切りの加工が施されている、あるいは金属リングが組み込まれているため、無用な負荷をかけて木材を割ってしまわないよう、状態をじっくり観察してから作業に入ります。

2. 下準備と専用工具による慎重な開閉

作業の妨げにならないようベルトのピンを外しフラットにした木製腕時計
ベルトのピンを抜き、時計本体をフラットな状態にして作業性を高めます。

まずはスムーズで安全な作業を確保するため、ベルトの接続ピンを抜いてケースをフラットな状態に伸ばします。こうすることで、工具が予期せぬ弾みでケースやベルトに干渉し、木材を傷つけてしまうリスクを防ぐことができます。

専用ホルダーに固定され、裏蓋が開けられた木製腕時計のムーブメント内部
専用加工した工具を使用し、力加減を手元で感じながら慎重に裏蓋を開放します。

裏蓋を開ける際、当店ではこの「マーチンマッカーサー」の構造に合わせて独自に加工を施した専用工具を使用いたします。

相手が金属素材であればトルク(力)をかけて回すことができますが、相手はデリケートな木材です。過度な力が加わると裏蓋の穴やネジ山が潰れてしまいます。工具とケースの接地感を指先で繊細に感じ取りながら、絶妙な力加減でゆっくりと裏蓋を開放していきます。

3. 内部清掃と丁寧なパッキンメンテナンス

綿棒を使ってムーブメント周囲のほこりや汚れを清掃している様子
内部に汚れや木屑が入り込まないよう、綿棒で丁寧に清掃を行います。

無事に裏蓋が開いたら、まずは内部ムーブメントの観察です。古い電池を取り外す際、ケースの開閉時に生じた微細な木屑や埃が機械内部に入り込まないよう、綿棒やブロワーを使って丁寧にお掃除を行います。清掃後、新しい電池へとセットいたします。

パッキンと裏蓋の接触部分に防水グリースを塗布するための準備作業
裏蓋のスクリュー部分やパッキンへグリース処理を行い、密閉性を高めます。
綿棒を使用して裏蓋パッキンの隙間にしっかりとグリースを馴染ませる作業
綿棒を使い、パッキンの細かな隙間にもしっかりとグリースを染み込ませていきます。

電池交換と同時に欠かせないのが、裏蓋パッキンへのシリコングリース処理です。 木製時計はもともと水気に弱い性質を持っていますが、パッキンの乾燥を防ぎグリースをしっかり馴染ませることで、密閉性と防水性を極力高め、汗や日常の湿気から内部機械を保護します。綿棒を用いて溝やリングの細部までグリースを行き渡らせます。

4. 動作確認と最終チェック

パルスチェッカーの上で動作確認を行い最終組み上げされた木製腕時計
パルスチェッカーで正常動作を確認後、感覚を研ぎ澄まして裏蓋を締め込み完成です。

新しい電池のセット完了後、目視での運針確認に加え、専用の「パルスチェッカー」を用いてムーブメントから正しい電気信号が出ているかを測定します。

動作に問題がないことを確認したら、いよいよ裏蓋の締め込みです。開ける時と同様に、金属ケースとは異なる「木のしなりや抵抗感」を手元で敏感に察知しながら、しっかりと、かつ締めすぎないジャストな位置まで固定します。

無事に元通りの美しい状態で、お客様へお返しすることができました。

5. 木製腕時計や特殊な時計のメンテナンスもご相談ください

木製腕時計はその素材の特性上、一般的な時計店では「ケース破損のリスクがある」として電池交換を断られてしまうことも少なくありません。

エファーナでは、時計ごとの素材や構造に合わせた専用治具・工具の加工や、長年の経験に基づく手作業の技術を用いて、他店で断られてしまった特殊なブランド時計やヴィンテージモデルのメンテナンスにも柔軟に対応しております。

エファーナのウェブサイトでは、今回の事例のほかにも様々なブランド腕時計の電池交換・修理・オーバーホールや、ジュエリーリフォームの事例を豊富に掲載しております。大切な時計やジュエリーのメンテナンスでお困りの際は、ぜひお気軽にご参考・ご相談ください。