お気に入りの腕時計が止まってしまったとき、多くの場合はシンプルな電池交換で元通りに動き出します。しかし、今回エファーナにお持ち込みいただいた腕時計は、一筋縄ではいかないギミックを搭載したイギリスの名門ブランド「ROTARY(ロータリー)」のダブルフェイス(リバーシブル)モデルです。

まずは時計の外観と機構を細かくチェックしていきます。スクエア型のシャープなケースに、クラシカルなアラビアインデックスとスモールセコンド(秒針)が配置された美しいホワイトフェイスの時計部分を確認します。

この時計の最大の特徴は、ベルトからケースを外すことなく、時計部分本体を指でくるりと回転させられる点にあります。回転させていくと、もう一つのフェイスである、モダンでスタイリッシュなブラックフェイスが現れます。

文字盤が2つあるということは、内部に2つの独立したクォーツムーブメント(機械)が背中合わせ、あるいは並列で収納されていることを意味します。当然、電池も2個必要になります。非常にトリッキーな設計になっているため、まずはケース全体の噛み合わせやネジの位置など、分解のための構造を慎重に確認していきます。

構造を見極めたところで、いよいよ分解作業に移ります。この特殊なリバーシブル構造をクリアするため、まずはホワイトフェイス側にある竜頭(りゅうず)を注意深く取り除きます。竜頭を抜くことで内部のフレームが解放され、ようやく2基のムーブメントが格納された心臓部までたどり着くことができました。

ケースを開けると、長年の使用によってケースの縁や溝に微細なチリやホコリが蓄積しているのが見られます。これらが新しい電池を入れる際や、ケースを閉じる際に内部へ汚れ等として残らないよう、細い綿棒を使い隅々まで丁寧にお掃除を施します。ベースが綺麗になったところで、まずは1基目のムーブメントの古い電池を外し、新しい電池へと交換を進めていきます。

続いて、反対側のブラックフェイス側も同様の手順で古い電池を取り外し、新しい電池へと交換します。2基とも新品の電池がセットされた状態で、それぞれの文字盤がしっかりと正確に運針を再開したことを確認します。共に動作の確認が取れたところで、時計の防水性を担保する重要なパーツである「輪ゴム状のゴムパッキン」の状態確認に移ります。

パッキンが乾燥してひび割れていたり、平らに潰れて変形したりしていると、そこから汗や雨水が侵入してしまいます。今回はパッキン自体の弾力が残っていたため、専用のツールを用いてシリコングリース処理を施します。これによりゴムの気密性と防水性が復活し、長持ちするようになります。しっかりと裏蓋を安全に閉じるための準備を整えていきます。

すべての準備が整ったら、慎重にパーツを組み戻します。開いた側の時計ケースを歪みがないように水平に保ち、専用のプレス機を使用して本体側へゆっくりと圧入で閉じていきます。隙間なく完全に閉まったことを確認した後、最初に抜いた竜頭を元の位置へと差し込み、ギアが噛み合うポジションでしっかりと固定します。

最後に、ホワイトフェイス側の時刻調整を行い、さらにくるりと回転させて反対側のブラックフェイス側も同様にリューズを引いて現在の正確な時刻へ合わせれば、すべての作業が完了です。

2つの異なる表情を持ち、それぞれが独立して正確な時間を刻むロータリーのダブルフェイス。その複雑な構造ゆえに、一般的な店舗では敬遠されてしまうこともありますが、エファーナでは時計の仕組みを熟知した職人が一つひとつ丁寧に対応いたします。
エファーナのwebサイトにも、今回のような特殊時計の電池交換や、ハイブランド腕時計の分解掃除(オーバーホール)など、様々な事例を豊富に掲載しているので、ぜひご参考になられてください。「眠っている少し変わった時計がある」「他店で断られてしまった」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。