ホワイトセラミックの美しさを永く。8本ネジの精密構造と職人が行う電池交換メンテナンス|CHANEL / シャネル

電池交換でお預かりしたシャネル J12 ホワイトセラミックのレディース腕時計
止まってしまったシャネル J12。ダイヤインデックスが輝く上品なレディースモデルです。

凛としたホワイトセラミックの質感と、煌めくインデックスが魅力的な「シャネル J12」。ラグジュアリースポーツウォッチの代名詞として世界中で愛されるこのモデルは、女性の腕元を華やかに演出してくれる特別なパートナーです。

今回お持ち込みいただいたのは、秒針が止まってしまったレディース仕様のJ12。「お気に入りだから、これからもずっと大切に使いたい」というお客様の想いにお応えするため、私たちは単に電池を入れ替えるだけでなく、長く安心してお使いいただくための「精密メンテナンス」として作業を行っていきます。

電池交換でお預かりしたシャネル J12 ホワイトセラミックのレディース腕時計
止まってしまったシャネル J12。ダイヤインデックスが輝く上品なレディースモデルです。
シャネルJ12独自の構造「8本ネジ」を慎重に緩める

作業に入る前、まずは時計全体の構造を改めて入念に観察・確認します。

一般的な腕時計の裏蓋は「ねじ込み式(スクリューバック)」や「はめ込み式(スナップバック)」が多いのに対し、シャネルJ12の多くは8本の精密な小ネジで裏蓋をケースに固定する特殊な構造を採用しています。

8本の精密ネジで固定されているシャネル J12のステンレス製裏蓋
作業前に裏蓋の構造を確認。8箇所の小ネジで精密に固定されています。

この8本ネジ構造は気密性が非常に高い反面、分解・組み立て時には極めて繊細な判断が求められます。ネジ穴に合った専用の精密ドライバーを選び、1本ずつ慎重に緩めていきます。

このとき意識しているのが「対角線上に緩める」という基本動作。一箇所だけに偏った力がかかると、裏蓋やケースにわずかな歪みが生じたり、ネジ山を痛めたりするリスクがあるためです。外した小さなネジは無くさないよう専用のトレイへとまとめて保管します。

対角線順に8本の小ネジを取り外しトレイに整理して保管する様子
ジ山を痛めないよう、対角線順に慎重にネジを緩めて外していきます。
内部の観察と「見えない汚れ」の徹底除去

裏蓋を優しく開けると、内部のムーブメントが現れます。ここで役目を終えた古い電池を取り外し、回路周りや端子にサビや液漏れの跡がないか、しばし観察を行います。

裏蓋を開けて役目を終えたボタン電池を取り外したケース内部
裏蓋を取り外し、役目を終えた古い電池を撤去。内部状態をくまなくチェック。

問題がないことを確認したら、次は掃除の工程です。セラミックケースと金属製裏蓋の設置面、そして8箇所の小さなネジ穴の周囲には、長年のご使用によって汗や微細なホコリが蓄積しがちです。

セラミックケースのフチや小さなネジ穴の汚れを綿棒で清掃する工程
ケース縁や8箇所の小さなネジ穴に溜まった微小な汚れを綿棒で除去。

こうした微細な汚れを残したまま裏蓋を閉じると、汚れが噛み込んで隙間ができ、湿気や水の侵入原因になってしまいます。そのため、綿棒を用いて細かい隙間まで丁寧に拭き上げていきます。

続いて、防水性能の要となるパッキンの状態を確認します。長年圧着されていたパッキンは裏蓋側に張り付いていることも多く、弾力性や傷の有無を慎重に見極めます。

裏蓋に固着・圧着されていた黒いゴムパッキンの状態を確認する様子
長年の圧着で裏蓋側に残ったパッキン。弾力や潰れ具合を確認します。

同様に、裏蓋の溝やフチ部分に付着した頑固な汚れも綿棒を使ってきれいに除去していきます。

裏蓋のフチや裏面の仕上げ溝に固着した汚れを綿棒で拭き取る作業
裏蓋側の小さな溝やフチに付着した頑固な汚れも綿棒で徹底清掃。
グリース処理と均一なトルクでの組み立て

汚れを綺麗に落としたパッキンには、シリコングリース処理を施します。

シリコングリース塗布器のスポンジに挟んで馴染ませるパッキン処理
パッキンにシリコングリースを塗布し、ゴムの柔軟性と防水性を復活させます。

専用のスポンジでパッキン全体に均一にシリコングリースを馴染ませることで、ゴムの乾燥・劣化を防ぐとともに、裏蓋を閉める際のねじれや噛み込みを滑らかに防止します。

新しい電池を組み込み、処理を施したパッキンを正確な位置にセットしたら、裏蓋を戻します。外すときと同様、8本のネジを対角線の順番で少しずつ均等に締め込んでいきます。特定のネジだけを強く締めすぎないよう、手感覚で絶妙なトルクコントロールを行い、しっかりと密閉固定します。

二重チェックを経て、再びお客様の腕元へ

すべての組み上げ作業が完了したら、最後の大切なプロセスです。

目視による針の運針チェックに加え、専用測定器「パルスチェッカー」に時計をセットします。内部回路から規則正しく動作信号(パルス)が出ているかを確認し、機械的・電気的に問題がないかをWチェック。

組み上げてパルスチェッカーで動作確認を行い現時刻を合わせたシャネル J12
裏蓋を均等に締め直し、パルス信号チェックと時刻合わせを行って完了です!

「問題ない!」と確認できたら、現在時刻と日付を正確に合わせて作業完了です。

真っ白なセラミックケースをサッと磨き上げると、止まっていた秒針が再び美しく時を刻み始めました。長年連れ添った大切な腕時計が元気を取り戻した瞬間は、何度経験しても嬉しいものです。

大切なブランド時計をこれからも安心してお使いいただけるよう、私たちは目に見えない細部の清掃やパッキン処理に至るまで、一つひとつの工程に想いを込めて作業しております。止まってしまった時計やメンテナンスのご相談は、ぜひお気軽にお持ち込みください。