TUDOR / チューダー|グラグラで着けられないベルトを救う!内部で折れたピンを精密ドリルで修正。

バックル結合部のコマサイドに施された、ドリル貫通とピン修理の美しい仕上がりを拡大した写真(赤丸で修理箇所を指示)
拡大して仕上がりを確認。新設されたピンの頭(赤丸部分)が美しく均一に収まっている様子

高級時計として世界中で愛されているチューダー(TUDOR)。タフで実用性に優れた堅牢な造りが魅力ですが、長年愛用していると、思わぬアクシデントに見舞われることがあります。なかでも多いご相談の一つが「金属ベルト(ブレスレット)の破損」。

「ベルトのコマがグラグラになってしまい、腕に着けられない」 「千切れて時計を落としてしまいそうで怖い」

今回は、そんな深刻な状態で当店にお持ち込みいただいたチューダーのブレスレット修理の全貌を、実際の作業工程とともに詳しく解説します。メーカーでは「ベルト一式交換」と言われてしまうようなケースでも、これまでの経験(微細加工技術)によって、元のオリジナルベルトを活かしたまま綺麗に直すことが可能です。

1. 破損状況の確認と原因の特定

まずはお持ち込みいただいた時点での時計の状態を詳しく観察します。

ベルト根元のコマが破損し、結合部分が大きく隙間を空けてグラグラになっているチューダーの腕時計
ベルト根元のコマが破損し、グラグラで着用できない状態のチューダー

お客様から不具合が発生した際の前後の状況や、普段の使い方などを店頭で丁寧にお聞きしていきます。

店頭でお客様から状況を聞きながら、チューダーのベルト破損原因(内部のピン折れ)を入念に確認している様子
お客様への丁寧なヒアリングと、コマ内部でのピン折れ原因の特定

破損箇所をさらに拡大して観察し、構造とダメージの深さをチェックします。

チューダーのステンレスベルトのコマ結合部分が完全に外れかかっている損傷箇所のクローズアップ写真
内部ピンの破断により、結合が維持できなくなっている損傷箇所の全体像

2. 元のベルトを活かす独自の「修理プラン」をご提示

通常、このような内部ピンの破断が起きると、多くのショップやメーカー正規カスタマーサービスでは「ベルト全体の交換(アセンブリ交換)」を案内され、高額な費用がかかってしまうケースがほとんどです。しかし、当店では「大切な時計のオリジナル性をできる限り残し、コストも抑える」ための特殊な修理案をご提案。

お客様に「極細ドリルで穴を貫通させサイドからピンを差し込む」という修理案を説明し、お預かりしたチューダー
極細の鋼鉄ドリルを使用した独自の修理プランをご提示し、時計をお預かり

3. 0.1ミリ単位の精密穴あけ加工

ここからがいよいよ見せ所です。まずは安全かつ正確に作業を行うため、時計本体からベルトを取り外します。

チューダーの時計本体からステンレスベルトを取り外し、コマのドリル穴あけ加工の準備を行っている様子
時計本体からベルトを分離し、慎重にドリル加工の準備へ

硬いステンレス製のコマにまっすぐドリルを通すため、最初のアタリ(印)を付けます。

丸型のダイヤバーを使用し、チューダーのコマサイドに正確なドリル穴あけのポイント(印)を付けている作業風景
丸型ダイヤバーを用い、穴あけの起点となるポイントを正確に印付け

今回の作業のために用意されたのが、コンマ数ミリ単位で異なる精密なドリル刃です。

チューダーのベルト修理に使用する、サイズ(太さ)が異なる3種類の精密な鋼鉄製ドリル刃
段階的に穴を広げるために用意された、3種類のサイズの異なる精密ドリル

まずは最も細い刃を使い、内部で折れて詰まっているピンを打ち抜くためのガイドライン(下穴)を貫通させます。

0.8φ(直径0.8ミリ)の極細鋼鉄ドリルを使って、チューダーのコマサイドからまっすぐに下穴を貫通させている様子
まずは0.8φの極細ドリルを使用し、芯を外さずに慎重に下穴を貫通

下穴が綺麗に通ったら、本番用の太さへと穴を拡張していきます。

1.0φ(直径1.0ミリ)のドリルに持ち替え、先ほど開けた下穴をまっすぐに広げて貫通させている修理工程
続いて1.0φのドリルを使用し、歪みなくまっすぐに穴を拡張

4. 新しいピンの固定と最終調整

綺麗に開いた貫通穴を整え、いよいよ新しい強固なピンを仕込んでいきます。

貫通した穴を綺麗に整え、サイドから太めのピンを差し込んでコマを繋ぎ、ベルトの可動域をチェックしている様子
貫通した穴を美しく整え、サイドから強固なピンを差し込んで結合。可動域も入念にチェック

微調整を終えたら、新設した太めのピンをコマのフラットな面に馴染むよう、しっかりと叩き込んで定着させます。

チューダーのベルトコマサイドに、新しく太い金属ピンをしっかりと叩き込んで綺麗にフラットに入れ込んだ状態(赤い矢印で作業箇所を指示)
新しいピンをしっかりと叩き込み、隙間なく美しく入れ込みが完了

5. 修理完了!美しく蘇ったブレスレット

すべての加工が終わり、強度の高まったベルトをお客様の元へ。納品時には、どのように修理を行ったのか加工部分を拡大してご覧いただき、今後のご使用上のアドバイスとともに丁寧にご説明を差し上げます。

バックル結合部のコマサイドに施された、ドリル貫通とピン修理の美しい仕上がりを拡大した写真(赤丸で修理箇所を指示)
拡大して仕上がりを確認。新設されたピンの頭(赤丸部分)が美しく均一に収まっている様子

大切な時計のベルト修理は、諦める前に当店へ

今回のような「内部でのピン折れ」は、外見からは見えない場所で徐々に金属疲労や汗による腐食が進み、ある日突然破断してしまうことが多いトラブルです。

メーカーで「修理不能」「ブレスレットごとの交換」と判断されてしまうようなケースでも、時計修理の専門知識と微細な金属加工技術を組み合わせることで、このようにピンを新設して美しく、そして強固に復元することができます。

お手持ちのチューダーや高級腕時計のベルトに「緩みがある」「グラグラして隙間が開いている」と感じたら、完全に千切れて大切な時計を落としてしまう前に、ぜひ一度当店のプロの技術者にご相談ください。お客様の大切な思い出が詰まった時計を、最適な方法で再び安心して身に着けられるよう、真心を込めて修理いたします。