高級時計として世界中で愛されているチューダー(TUDOR)。タフで実用性に優れた堅牢な造りが魅力ですが、長年愛用していると、思わぬアクシデントに見舞われることがあります。なかでも多いご相談の一つが「金属ベルト(ブレスレット)の破損」。
「ベルトのコマがグラグラになってしまい、腕に着けられない」 「千切れて時計を落としてしまいそうで怖い」
今回は、そんな深刻な状態で当店にお持ち込みいただいたチューダーのブレスレット修理の全貌を、実際の作業工程とともに詳しく解説します。メーカーでは「ベルト一式交換」と言われてしまうようなケースでも、これまでの経験(微細加工技術)によって、元のオリジナルベルトを活かしたまま綺麗に直すことが可能です。
1. 破損状況の確認と原因の特定
まずはお持ち込みいただいた時点での時計の状態を詳しく観察します。

お客様から不具合が発生した際の前後の状況や、普段の使い方などを店頭で丁寧にお聞きしていきます。

破損箇所をさらに拡大して観察し、構造とダメージの深さをチェックします。

2. 元のベルトを活かす独自の「修理プラン」をご提示
通常、このような内部ピンの破断が起きると、多くのショップやメーカー正規カスタマーサービスでは「ベルト全体の交換(アセンブリ交換)」を案内され、高額な費用がかかってしまうケースがほとんどです。しかし、当店では「大切な時計のオリジナル性をできる限り残し、コストも抑える」ための特殊な修理案をご提案。

3. 0.1ミリ単位の精密穴あけ加工
ここからがいよいよ見せ所です。まずは安全かつ正確に作業を行うため、時計本体からベルトを取り外します。

硬いステンレス製のコマにまっすぐドリルを通すため、最初のアタリ(印)を付けます。

今回の作業のために用意されたのが、コンマ数ミリ単位で異なる精密なドリル刃です。

まずは最も細い刃を使い、内部で折れて詰まっているピンを打ち抜くためのガイドライン(下穴)を貫通させます。

下穴が綺麗に通ったら、本番用の太さへと穴を拡張していきます。

4. 新しいピンの固定と最終調整
綺麗に開いた貫通穴を整え、いよいよ新しい強固なピンを仕込んでいきます。

微調整を終えたら、新設した太めのピンをコマのフラットな面に馴染むよう、しっかりと叩き込んで定着させます。

5. 修理完了!美しく蘇ったブレスレット
すべての加工が終わり、強度の高まったベルトをお客様の元へ。納品時には、どのように修理を行ったのか加工部分を拡大してご覧いただき、今後のご使用上のアドバイスとともに丁寧にご説明を差し上げます。

大切な時計のベルト修理は、諦める前に当店へ
今回のような「内部でのピン折れ」は、外見からは見えない場所で徐々に金属疲労や汗による腐食が進み、ある日突然破断してしまうことが多いトラブルです。
メーカーで「修理不能」「ブレスレットごとの交換」と判断されてしまうようなケースでも、時計修理の専門知識と微細な金属加工技術を組み合わせることで、このようにピンを新設して美しく、そして強固に復元することができます。
お手持ちのチューダーや高級腕時計のベルトに「緩みがある」「グラグラして隙間が開いている」と感じたら、完全に千切れて大切な時計を落としてしまう前に、ぜひ一度当店のプロの技術者にご相談ください。お客様の大切な思い出が詰まった時計を、最適な方法で再び安心して身に着けられるよう、真心を込めて修理いたします。