1. 愛知県から届いた、一本の美しいご依頼品
「お気に入りの時計が止まってしまったけれど、近くにお店がない……」 そんなときは、ぜひエファーナの郵送修理をご活用ください。全国どこからでも、大切な時計をお預かりして丁寧なメンテナンスを行っております。
今回ご紹介するのは、愛知県にお住まいのオーナー様から「電池が切れてしまったので交換してほしい」とご相談いただき、はるばる郵送にて届いた素敵なお時計の事例です。

届いた荷物を開封すると、重厚なメタルチェーンと、四角いスクエアケースに開閉式のフロントカバーがついた、実にかっこいい腕時計が姿を現しました。 こちらは、デザイナーのドン・小西氏が手がけ、そのアヴァンギャルドで独創的な世界観から熱狂的なファンを持つジャパンブランド「FICCE(フィッチェ)」のブレスレットウォッチです。
再び美しい時を刻めるよう、さっそく状態を確認しながら作業を進めていきましょう。
2. 裏蓋の構造確認と、フロントカバーに潜む「要注意の工程」
まずは作業前に、ケース裏面の構造を入念にチェックします。

裏蓋には「ficce Y.KONISHI」のブランドロゴがしっかりと刻まれています。 形状は長方形で、ケースとのわずかな隙間に専用のヘラ(こじ開け器)を差し込んでパカッと開ける、通称「ポコタイプ(はめ込み式)」と呼ばれる構造です。
しかし、この時計を裏返す前に、職人として絶対に油断できない重要なポイントがありました。それが時計の「表側」のデザインです。

表側のフロントカバーには、漆黒の美しいストーンを中央にあしらった、立体的なゴールドカラーのクロス(十字架)装飾が燦然と輝いています。 裏蓋を開けるために時計を下向きにして固定する際、この立体的なクロスに無理な圧力がかかってしまうと、せっかくの美しいゴールドの装飾が歪んだり、中央の石が脱落したり、カバーのヒンジ(蝶番)に過度な負荷がかかって壊れてしまう危険性があります。
これこそが、今回の電池交換における「要注意の工程」なのです。
3. 細心の注意を払った「裏蓋開き」と、内部の「綿棒大掃除」
表側のデリケートなクロス装飾を優しく包み込んで保護し、下からの圧力が一部分に集中しないよう工夫を凝らしながら、時計をしっかりとホールドします。

細心の注意を払いながら、裏蓋のわずかな凹みに専用のヘラを差し込み、じわりと均等に力をかけていきます。金属同士の摩擦でケースを傷つけないよう慎重にコントロールし、ようやく綺麗に裏蓋を開けることができました。

蓋が開いたら、まずは内部のムーブメントをしばし観察します。 幸いにも過去の液漏れなどはなく綺麗な状態ですが、長年のご愛用によってケースの噛み合わせ部分には微細なチリや黒ずみ汚れが付着していました。
ここからは「綿棒」が大活躍する番。 新しい電池をセットする際や裏蓋を閉じる瞬間に、これらの細かなゴミがポロポロと機械内部に入り込んでしまうと、将来的な回路のショートや故障の原因になります。ムーブメントの精密な電子回路に触れないよう、外周部分の溝を綿棒で優しく丁寧に拭き取ってお掃除していきます。
4. 四角い防水パッキンの点検と、隙間の徹底クリーニング
次に、時計の隙間から汗や水分が侵入するのを防いでいる「防水パッキン」のメンテナンスに移ります。

長方形の裏蓋のフチに吸着していたパッキンをピンセットでそっと取り剥がし、ゴムの状態をチェックします。 ゴムが完全にカサカサに乾いて硬化していたり、ひび割れや変形があった場合は新品交換が必要ですが、今回のパッキンはまだしなやかな弾力を保っていました。

パッキンを外した後の「裏蓋の溝」も忘れてはいけません。ここも綿棒を使って、蓄積した古い脂分や細かな汚れを徹底的に拭き取っていきます。 溝を均一でクリーンな状態にリセットしておくことが、防水性をしっかりと引き出すための隠れた重要ポイントです。
5. シリコングリス処理による防水機能の復元
状態が良好だったパッキンを再装着する前に、長持ちさせるための仕上げを行います。

防水パッキン専用の「シリコングリス」を含ませた、黄色い専用スポンジの中に四角いパッキンを載せ、全体にグリスを馴染ませます。 これによりゴムの表面に薄く均一なシリコンの皮膜が形成され、ゴムの乾燥劣化を防ぐとともに、蓋を閉めたときの気密性を劇的に高めることができます。
グリスアップしたパッキンを、ねじれや歪みが出ないように注意しながら、裏蓋の所定の位置へ均一に配置し直します。
6. パルスチェックと時間合わせを終えて、お渡し準備へ
準備が整ったら裏蓋を歪みなく真っ直ぐにプレスして閉じ、最終的な動作検証を行います。

時計を専用の測定器「パルスチェッカー」に載せ、新しい電池から電子回路へ正常な駆動信号が送られているかを電子的に確認します。 ランプが正しく点滅するのを確認し、さらに肉眼でも文字盤の針が力強く動き始めたことをダブルチェックします。
最後に、リューズを引いて現在の正確な時刻をきっちりと合わせ、メタルブレスレットとケース全体を艶やかに磨き上げたら、これですべての電池交換メンテナンスが完了です!
大切な時計のメンテナンスは、ぜひエファーナへ
エファーナでは、今回のFICCEのように「表側に繊細な装飾がある」「珍しいスクエア型のケース構造をしている」といった、一癖ある個性的なお時計であっても、そのリスクを的確に見極め、最適な保護と丁寧なアプローチで作業を行います。
遠方にお住まいで近くに頼れる時計店がない方も、今回のように郵送修理にて全国から承っておりますので、どうぞお気軽にエファーナまでご相談ください。
また、エファーナのウェブサイトには、他にも様々なブランド時計のオーバーホールや電池交換、さらにはジュエリーのリフォームやカスタム事例など、豊富な実績を多数掲載しております。ぜひそちらもご参考になさってくださいね。
オーナー様の大切な相棒が、これから先も長く格好よく時を刻み続けられるよう、職人が心を込めてお手伝いいたします。