PAUL HEWITT / ポールヒューイット3Dプリンター製オリジナル治具で安全に閉める!クロノグラフの丁寧な電池交換と防水メンテナンス

パルス測定器の上で電子回路の出力テストを終え、時間調整が完了したPAUL HEWITTのクロノグラフ腕時計
パルス測定と目視チェックを完了し、現在の時刻を合わせてお渡しの準備を整えます。

「ようやく持ってこられました!」止まってしまったお気に入りの腕時計

お気に入りの時計が電池切れで止まったまま、「いつか持っていこう」と眠ってしまっていませんか?

本日ご紹介するのは、マリンテイスト漂うミニマルなデザインが愛されているブランド「PAUL HEWITT(ポールヒューイット)」の電池交換とメンテナンス事例です。

秒針が止まった状態でお預かりした、シックなグレー文字盤のPAUL HEWITTクロノグラフ腕時計
「ようやく持ってこられました」とお持ち込みいただいた、止まってしまったPAUL HEWITT。

「止まったまま気になっていたのですが、ようやく持ってこられました!」と、お客様が笑顔でエファーナにお持ちくださいました。 止まっている時間が長いと、古い電池の液漏れが起こり、内部の繊細な回路を腐食させてしまう恐れがあります。そうなる前に、こうして再び動かす決意をしてお持ち込みいただけて、私どもも嬉しい限りです。

最初の一歩:ケース全体の入念なチェック

お預かりしたモデルは、スポーティーかつシックな佇まいが美しい「クロノグラフ(ストップウォッチ機能付き)」モデルです。 作業を始める前に、まずはルーペを使いながら時計全体をくまなくチェックし、裏蓋の構造を確認していきます。

PAUL HEWITTの裏蓋。中央にブランドのアイコンであるPHとアンカーマークが刻印されている
クロノグラフ仕様の裏蓋構造を確認し、最適な作業アプローチを決定します。

中央に大きく刻まれた「PH」とアンカー(錨)のブランドロゴが印象的な裏蓋です。 このモデルは、隙間に専用のオープナーを差し込んで開ける「こじ開けタイプ」のスナップバック式。さらに側面には、時刻を調整するリューズのほかに、クロノグラフを動かす2つの丸いプッシュボタンが突き出ています。 こうした側面のデリケートなパーツや、薄型のスマートなケースを歪ませたり傷つけたりしないよう、最初の段階で最適な工具の選定と力の入れ方を頭の中で設計します。

裏蓋の開放と、内部に入り込む「ホコリ」の除去

適切な角度からヘラを差し込んで、美しく静かに裏蓋を開けました。すぐに新しい電池をセットしたいところですが、ここからがエファーナのこだわりの始まりです。

専用のヘラで開けた時計の内部、ケースの細かな隙間の汚れを綿棒で掃除している様子
裏蓋を開け、古い電池を取り外した後に綿棒でケース内周のチリを取り除きます。

裏蓋とケースが合わさる金属のフチ(溝)には、日常の使用でどうしても汗や微細なチリが固着してしまいます。 電池を抜き取った後、これらの汚れがむき出しになったムーブメント内部に入り込まないよう、綿棒を使って細部まで徹底的にクリーニングを施します。チリひとつない綺麗な土台を作ることが、時計の寿命を格段に伸ばすポイントです。

時計の水侵入を防ぐ「防水パッキン」の点検と溝掃除

お次は、腕時計の中に汗や水気が入るのを防いでくれている黒い極細のゴムリング「防水パッキン(Oリング)」のメンテナンスです。

取り外した裏蓋の内側に貼り付いている黒い極細の防水ゴムパッキンをピンセットで確認している様子
時計の気密性を守る要、裏蓋パッキンの柔軟性や劣化状態を確認。

裏蓋の溝にしっかりと張り付いていたパッキンをピンセットでゆっくりとはがし、ゴムのしなやかさ(柔軟性)が失われていないか、ひび割れなどの劣化が生じていないかチェックします。

パッキンを取り外した裏蓋内周の溝に沿って、綿棒で黒ずみ汚れをきれいに拭き取っている様子
パッキンを剥がし、最も汚れが蓄積しやすい裏蓋の溝を綿棒で磨き上げます。

チェックを終えたら、さらに裏蓋側のゴムが収まる「パッキン溝」も掃除します。 ここはホコリや劣化した油、皮脂汚れなどが一番固着しやすい場所。綿棒をスライドさせて、見えない汚れまでスッキリと取り去り、裏蓋の金属の肌を綺麗に露出させます。

シリコングリース処理による高い防水機能の復元

今回のパッキンはまだしなやかさがあり、十分に再利用できる状態でした。 パッキンをただそのまま戻すのではなく、しっかりと「グリスアップ」を行います。

防水パッキン専用のシリコングリスが染み込んだ黄色いスポンジにパッキンを載せている様子
状態良好なパッキンに専用のシリコングリースを塗布し、弾力を保護。

防水パッキン専用の「シリコングリス」がたっぷりと染み込んだ、黄色い専用スポンジ状の塗布器。この間にパッキンをそっと挟み込んで滑らせることで、ゴムの表面全体に均一な油膜をコーティングします。これによりゴムの乾燥を防ぎ、裏蓋を閉じた時の隙間をシャットアウトして高い気密性を発揮させます。

グリスアップした防水パッキンを、ピンセットを使って裏蓋の外周溝にねじれなく再装着している様子
グリースを塗ったパッキンを、均一に負荷がかからないよう注意深く所定の位置へセット。

グリスアップしたパッキンを、歪みやねじれ、余分なたわみがないように均等なテンションで元の裏蓋の溝へと戻していきます。パッキンの一部が寄れたり挟まったりすると、気密性が失われるだけでなく、隙間ができて裏蓋を閉める際にゴムがちぎれてしまうため、熟練の指先とピンセット捌きで綺麗に配置します。

テクノロジーの融合:3Dプリンターで自作した専用治具

電池交換の最後の山場である「裏蓋閉め」。 実は、PAUL HEWITTのクロノグラフモデルのように、裏蓋がフラットで閉めるのにかなり強い力が必要な時計は、手で押し込むことができません。一般的な閉鎖器(プレス機)にそのまま乗せると、側面に飛び出した2つのプッシュボタンが干渉して曲がってしまったり、力が偏って薄型のケースが歪んでしまうという深刻なリスクがあります。

そこで登場するのが、エファーナが誇る現代テクノロジーと職人技のコラボレーションです。

PAUL HEWITTのケースやプッシュボタンの突起にぴったり合わせて自作された、3Dプリンター製の黄色い特製治具
PAUL HEWITT専用に以前3Dプリンターで製作した、黄色の特製治具がここで大活躍。

こちらは、以前エファーナにて3D-CADを用いて設計し、3Dプリンターで出力した「PAUL HEWITT専用の特製受け治具(黄色)」です。 時計のケース形状やプッシュボタン、リューズの位置に寸分の狂いもなく完全にフィットする逃げ(凹み)を設けてあります。

3Dプリンター製の治具と時計をプレス機の下に置き、上部から金属プレスを当てて裏蓋をゆっくり閉めている様子
プレス機にセットして垂直に圧力をかけ、ピタリとはまり込む絶妙な感覚を感じながら閉じます。

プレス機にこの黄色い特製治具と時計を載せ、垂直にプレスを行います。 治具がケース全体を100%均等にしっかりと包み込んで支えてくれるため、余分なストレス(ねじれや干渉)を与えることなく、ある一定の位置まで押し込んだ瞬間に「クイッ」と優しくはまり込む絶妙な手応えが得られます。 これにより、極めて安全に、かつ一切のキズをつけることなく裏蓋を元の気密状態へと閉じることができます。

正常動作の二重確認と、お渡しの準備

無事に裏蓋を閉じたら、最終チェックを行います。

パルス測定器の上で電子回路の出力テストを終え、時間調整が完了したPAUL HEWITTのクロノグラフ腕時計
パルス測定と目視チェックを完了し、現在の時刻を合わせてお渡しの準備を整えます。

まずは専用の測定器「パルスチェッカー」に時計を乗せ、電気回路から正しいリズムのパルス信号(1秒ごとの動作信号)が出力されているかをランプ(LED)の点滅によって確認します。続いて、文字盤の秒針や2つのインダイヤルの針がしっかりと運針しているか、目視でのダブルチェックも実施。

すべての正常な動作をこの目で確認したのち、お預かり時にズレてしまっていた時間とカレンダーを現在の正確な時刻へと丁寧に合わせ、時計の外装を美しく磨き上げて完了です。

大切な時計を長く使うためのメンテナンスは、エファーナへ

ただ電池を入れてフタを閉じるだけでなく、時計ごとに異なる「最適解」を考え抜くこと。それがエファーナの電池交換への誇りです。今回の3Dプリンター製治具の活用も、大切な時計に不必要な衝撃や負荷を絶対に与えたくないという職人の強い想いから生まれたアイデアです。

PAUL HEWITTをはじめ、クロノグラフモデルや高級ブランド時計、アンティーク時計など、大切な時計の電池交換や動かなくなってしまった腕時計のオーバーホール修理は、ぜひエファーナまでご相談ください。

また、エファーナのウェブサイトには、他にも様々な腕時計のメンテナンス事例や、ジュエリーのオーダーメイド・修理リフォームの事例を数多く掲載しております。ぜひそちらもご覧いただき、ご参考になさってくださいね。

皆様の大切な相棒である時計が、再び美しい時を刻み始める日を、心よりお待ちしております。