お気に入りの時計、あるいは大切な方からの贈り物。時が止まり、少し傷ついてしまったからといって、諦めて引き出しの奥に眠らせてはいませんか?
お母様にとってかけがえのない宝物である、娘様からプレゼントされたお気に入りの腕時計のお直しです。
止まった時間と、失われた輝き
お持ちくださったのは、文字盤の中でハートが揺れる、とても可愛らしい「Alessandra Olla(アレッサンドラ・オーラ)」の腕時計。
しかし、そは、長い時間が止まったままの悲しげな状態でした。

ベルトは完全に取れて失われてしまい、文字盤の周囲をきらびやかに飾っていたはずのベゼルのラインストーンも、ご覧の通りいくつも抜け落ちてしまっていました。

「娘からもらった大切な時計、どうしても捨てられなくて……。なんとかもう一度、動くようにお直しすることはできませんか?」
お話を伺う中で、お客様の時計に対する深い愛情と、「もう一度使いたい」という強い情熱が届き、その熱い想いに応えるため、私たちは段階を踏んだ「お直し計画」をご提案。
一度にすべてを進めるのではなく、「まずは電池交換をして動くかどうかを確認。動くようであれば、ベルトの交換、そしてキラキラのストーンの付け替えへと進む」という順番です。動かないまま外装だけを直しても、時計としての役割を果たせなくなってしまうからです。この順番こそが、メンテナンスにおいて最も大切です。
メンテナンスと、心臓部の復活
さっそく、一番最初のステップである裏蓋を開けての電池交換と状態チェックに入ります。
新しい電池をセットすると、それまで眠っていた針がすぐさま刻み始めました。ムーブメント内部(機械)には問題がないようで、一安心。ここで時計の寿命を左右する細部の点検に移ります。

時計内部にホコリや微細な汚れを残さないよう、細部をお掃除していきます。ここでの大活躍アイテムは「綿棒」です。

さらに、時計の防水性を保つための要である「裏蓋のゴムパッキン」の状態をチェック。ピンセットで慎重に取り出し、劣化による亀裂がないかを確認します。

ゴムパッキンが収まる裏蓋の金属の溝にも、長年の汚れが溜まりやすいものです。ここも綿棒を使って徹底的に拭き取り、清潔に保ちます。

状態確認が済んだパッキンには、気密性をさらに高めるためのシリコングリース処理(塗布作業)を行います。このひと手間が、日常の汗や水気から時計を長く守る秘訣です。

裏蓋を閉める前に、パルスチェッカーを使って機械の動作信号を電気的に確認します。グラフとインジケーターの緑の光が、時計の確かな稼働を証明してくれました。これでベースとなる第一段階はクリアです!
鮮やかな赤と、きらめきの復活
時計が動くことを確認できたので、いよいよ外装の美しさを取り戻すステップへと進みます。 まずはベルトの選定です。

新しいベルトを隙間なく美しく取り付けるため、デジタルノギスを用いて時計本体の取り付け幅(ラグ幅)を正確に計測します。ミリ単位での正確な測定が不可欠です。

お客様からいただいたご要望は「赤色のベルト」。 実は、娘様から贈られた当時に最初についていたのが、鮮やかな赤いベルトだったのだそうです。「あの頃の思い出の姿に戻したい」という願いを込めて、深い赤色のレザーストラップをセレクトしました。
そして最後の仕上げ。ベゼルの周辺をぐるりと囲むストーンのうち、取れてしまっていたり、長年の汚れで輝きが鈍くなってしまっていた「23個」のキラキラパーツを、すべて新しいものへと丁寧に取り替え、付け替えを行いました。

すべてのストーンが揃い、新しい赤いベルトを纏った時計がこちらです。 あのくすんでしまっていたベゼルがまるで新品のようにキラキラと光を反射し、文字盤の中で揺れる赤いハートと、ベルトの赤がよみがえりました。

今回、新しく付け替えたことでお役目を終えた古いストーンや微細なパーツたちも、このように小さな袋に丁寧におまとめして、完成した時計と一緒にお客様にお渡し。 これまで時計を陰ながら支えてくれたパーツたちにも、感謝の気持ちを込めて。
最後に現在の時刻をきっちりと合わせ、お客様へとお渡しする準備が整いました。
再び美しく蘇り、時を刻み始めた時計をご覧になったお客様は、本当に嬉しそうに、何度も笑顔を見せてくださいました。お母様のその笑顔を見た娘様も、きっと喜んでくださるに違いありません。
お持ちいただいた「モノ」だけでなく、そこに込められた大切な人との「思い出の絆」も一緒に、もう一度繋ぎ直すこと。それこそが、エファーナが最も大切にしている仕事です。
エファーナのウェブサイトでは、眠っていた思い出の品を蘇らせた様々な修理事例を掲載しております。 「もう直らないかもしれない」と諦めてしまう前に、ぜひ一度、私たちにご相談ください。